製造業をつなぐ期待のIoTプラットフォーム「Edgecross(エッジクロス)」

ものづくりライターの新開です。2023年11月29日~12月2日まで、東京ビッグサイトで開催された展示会「国際ロボット展」に行ってきました。ここでいちばんの収穫となったのが、製造業をつなぐIoTプラットフォーム「Edgecross」を運営する「Edgecrossコンソーシアム」の展示でした。会場では事務局の岩瀬さんとトレンドマイクロの安斎さんにお話を伺うことができました。

製造業向け、いろいろな機器をつなぐ共通プラットフォーム

Edgecrossは、工場の機器を横断的にデータ収集・連携するための共通プラットフォーム。パソコンでいう「Windows」や「iOS」などのように、いろいろな会社の製品やサービスをつなぐ共通基盤となって働くOSのような役割をするシステムです。

ロボット展のブースでは、東京ビッグサイトの会場内で動く三菱電機、ダイヘン、川崎重工、エプソンのロボットと繋いでデータを取得し、実際の稼働状況を表示するシステムのデモンストレーションが行われていました。

エッジクロスは、さまざまなデバイス、ソフトウエアを接続して生産性向上に取り組めるIoTシステム

このシステムを提供・運営しているのは、2016年に日本の産業をリードする幹事会社7社(オムロン、NEC、日本オラクル、三菱電機、トレンドマイクロ、日本アイ・ビー・エム、日立製作所 ※順不同、法人格略)の共同出資により設立された「一般社団法人Edgecrossコンソーシアム」です。日本の産業競争力の強化が目的の非営利団体で、現在の参加企業は認定パートナーとユーザーを含めて約400社まで増えたそうです。

コンソーシアムが提供する「Edgecross基本ソフトウエア」は、1ライセンス税込98,000円と導入しやすい価格設定で、しかも買い切り価格。Windowsのパソコンにソフト(例:WordやExcel)やデバイス(マウス、マイク、スピーカーなど)を接続していくように、Edgecross基本ソフトの上に、会社ごとに必要なアプリやデバイスを構築することができます。

事務局の岩瀬さんによると「コンソーシアムの活動目的は日本の製造業全体の底上げです。非営利団体として利益を上げることを目指していないので、基本ソフトは安く提供している形です。ソフトの導入が増えれば、団体が維持されて仲間を増やす活動ができるという状況」とのこと。この姿勢があるからこそ、普段は競合になるベンダーやインテグレータも広く参加することができ、製造業の基本OSとしての普及が進んでいるようです。

セキュリティ面はトレンドマイクロがバックアップ

さて、工場のセキュリティというと、2022年にサイバー攻撃を受けた中小企業のシステムダウンでトヨタ自動車の生産が止まった件を思い出し、ヒヤッとする方も多いのではないでしょうか。今や中小企業といえどセキュリティ対策は不可欠になっており、Edgecrossのようなシステムに工場設備やソフトを接続する場合にも、どうしてもセキュリティ面が心配になってしまいます。

その点、Edgecrossではウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」で知られるトレンドマイクロが幹事会社として参画しており、ハード面で保護できるデバイスの提供も含めて伴走支援してくれているので安心です。

例えばロボットが稼働する工場で、ロボットコントローラーにウイルス対策を行うのは難しい場合が多いのですが、トレンドマイクロが提供する「侵入防御システム Edge IPS」を使えば、ネットワーク上に後付けで保護することができます。また、パトライトに取り付けたセンサーとの連動で設備の稼働監視を行うのと同時に、トラブルがあった場合にアラームを出すなどの運用もできるそうです。

トレンドマイクロの安斎さんは「Edgecrossと接続するアプリケーションなどについては、認定製品として私たちがチェックしているので、安心して使ってほしい」と教えてくれました。

セキュリティ面はトレンドマイクロ社が強力にバックアップしている

日本にEdgecrossがあって良かった

事務局の岩瀬さんに設立経緯を伺うと「経済産業省の方から『日本の製造業がIoTで世界に置いて行かれてはいけない、共通の基盤を作る必要がある』と各社に声がかかって、手を上げた7社が現在の幹事会社です。ただし、『国からの予算は付かないので自分たちで運営をしていくように』とのことだったので、最初は各社手弁当で集まって、皆で必死にソフトを立ち上げました」とのことでした。参加各社・メンバーに「日本がIoTで世界に勝てるように」という共通の思いがあったようです。

ところで、私は2023年4月にドイツの展示会「ハノーバーメッセ」でドイツの同様の取組み「FABOS」を先に取材していました。現地で聞いた話をざっくりまとめると、

「製造業の会社は、たとえ作っているものは違っても、材料仕入れ~加工~組立~出荷~販売 という流れは変わらない。ならば各社が別々にシステムを作るよりも、皆が使える共通のプラットフォームを整備しよう」

という取組みで、こちらにはボッシュ、シーメンス、トルンプなどドイツの大企業が参画していました。ドイツでは経産省に該当する政府からの支援もあるようです。

私はドイツでFABOSの話を聞いて「日本で一般的なスクラッチ型(0から開発する)の各社専用システムでは、システムインテグレーターが儲かるばかり。日本も全体でFABOSのような動きをしていかないと、世界に置いていかれる……」と落ち込んでいました。でも私が知らなかっただけで、Edgecrossは2016年からこの取組みをしていたということで、ブースでお話を伺って本当にうれしくなりました。

日本にEdgecrossがあって本当に良かった。きっと日本の製造業の共通プラットフォームとして、普及が進んでいくだろうと思います。そして私もこれから勉強して、オフィス・キートスの顧客の課題解決に活用していきたいと思います。

以上、ものづくりライター新開でした。

一般社団法人Edgecrossコンソーシアム
https://www.edgecross.org/ja/