日本初のゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL ZERO」に行ってきました

ものづくりライターの新開です。2023年10月に西日本を巡るツアーの途中、愛媛県西条市にあるホテル「いとまちホテル0」で1泊することができました。こちらのホテル、実は半導体関連機器のメーカー「株式会社アドバンテック」が運営主体。製造業がなぜホテルを? と気になってしまったので、実際に宿泊してお話を伺ってきました。

いとまちホテルゼロ のエントランス

石鎚山脈のふもとで2023年春に開業した「いとまちホテルゼロ」

ホテルがある愛媛県西条市は、北は瀬戸内海に面し、南には石鎚山がそびえる風光明媚な場所。街中から「うちぬき」と呼ばれる湧き水があふれる水の町でもあります。ここに2023年春、日本初のゼロエネルギーホテル「いとまちホテルゼロ」が開業しました。

石鎚山脈のふもとで風景に溶け込むいとまちホテルゼロ

ホテルをオープンしたのは、愛媛県西条市で1995年に設立された、半導体関連機器メーカーの「株式会社アドバンテック」。予習で見た「カンブリア宮殿」によると、こちらの山名社長が石鎚山から創業の地を見渡して「街の真ん中がぽっかりと空き地になっている」ことに気付き、街に賑わいを取り戻したいということで、ホテルを含むエリアを街ととらえた「いとまち」の構想が始まったとのことです。現在「いとまち」にはマルシェ、レストラン、ホテルのほか、住宅建設も進んでいます。

日本初のゼロエネルギーホテル

さて、いとまちホテルゼロは、ホテルとして日本で初めてZEB認証を取得した「ゼロエネルギーホテル」です。しかも環境省が定める最高ランク!

ZEBとは, Net Zero Energy Building(ネットゼロ・エネルギー・ビルディング)の略で、要はエネルギー消費を削減する「省エネ」とエネルギーを創る「創エネ」の組合せで、エネルギー収支±0を目指した建物のこと(詳しくは環境省のサイトでご確認ください)。

ホテルでは断熱や自然換気などの技術を使うことで、一般的なホテルの半分以下のエネルギーしか使用しないようになっています。また、使用するエネルギーの大半を太陽光発電で発電した電力で賄っているため、実質なエネルギー消費量はゼロになるということです。

フロントの横には、現在までのエネルギーの状況を表示するモニターがありました。

フロント隣でエネルギー状況をモニタ表示(いとまちホテルゼロ)

また、「いとまち」は災害で停電になっても太陽光発電と蓄電池で3日間電気がまかなえるようになっています。こちらが敷地内にあったマイクログリッドシステムの蓄電池エリアと、自家発電設備です。どちらも目立たない場所にありました。

いとまちホテルゼロのマイクログリッドシステム
いとまちホテルゼロの自家発電設備

隈研吾氏の設計による美しく快適なホテルライフ

さて、ここからはホテルのお話。ホテルの設計は建築家の隈研吾氏。コンクリートと木材を絶妙にブレンドした居心地のいい空間です。そしてホテルの中心となる中庭には、シンボル的に「うちぬき」が配されています。写真の左下が「うちぬき」で、周囲には椅子やベンチ、クッションがあって、人が集まれるような快適空間になっていました。

そして「うちぬき」からは、新鮮な湧き水がどんどん湧いてきます。水の音も心地よく、このまわりでのんびり本を読んだりするのも良さそうです。客室にある蛇口からもこの「うちぬき」の水がそのまま出るとのことので、滞在中はミネラルウォーター飲み放題でした。

中庭の中心にある「うちぬき」
「うちぬき」からは湧き水がどんどん湧いています

ホテルと「いとまち」を散策

また、ホテルは運営主体の株式会社アドバンテックのほか、国内外で話題のホテルを多数手がける株式会社GOODTIME、2社が厳選したデザイナーさんや作家さんの共同作品のような感じで雰囲気が作り上げられています。フロントの裏には、関係者のみなさんそれぞれの関わりとこだわりが展示されていて、これだけでも見応えがありました。

ホテルを作り上げた関係者の皆さんの紹介コーナー

ホテルの2階には、コワーキング&キッチンもありました。敷地内のレストラン「エル・ビステッカーノ・イト」も良かったのですが、マルシェで買った食材をここで調理するのもかなり楽しそうです。次回は自炊にしようかな……と悩みます。

コワーキング&キッチン(いとまちホテルゼロ)
地元産の食材や食器・アイテムが揃うマルシェ

敷地内のマルシェには地元産のお肉やお惣菜、パン、デザートなども並んでいました。距離は離れますが、本場直送のイタリアン食材もたくさんあったり、食器や小物なども充実していました。みかんジュースの種類がやたら多かったのは愛媛ならではだと思いました。

地元食材を使った朝食もおすすめ

さて、ゆっくり休んだ翌朝の朝食もおすすめです。最初に地元食材を使ったメインとスープを選びます。私は「カンブリア宮殿」で見たエッグベネディクトを選びました。

おかずは、こちらのカウンターから2品選ぶスタイルです。ご飯は玄米と白米から選べるようになっていたのですが、スタッフの方から「半々」を勧められて半分ずついただきました。

ということで、1泊の滞在でしたが、西条市と「いとまち」、「いとまちホテルゼロ」の魅力を存分に満喫できました。製造業の新規事業の事例として勉強になっただけでなく、レストランで地元食材を使った美味しい料理をいただき、マルシェでミカンジュースや食材を買って、「うちぬき」の美味しいお水を飲み放題でいただいて大満足。そして、ものづくりライターとしては、やっぱり「なぜ製造業がこういう素敵なホテルと街を創ったのか」その経緯などが気になってしまいます。今回、アドバンテック所属のスタッフさんと接点ができましたので、次回はメーカー視点からのお話を詳しく聞いてみたいと思います。

以上、ものづくりライター新開でした。

ITOMACHI HOTEL 0
https://itomachihotel-0.com/