内燃機関は当分なくならない?

オフィス・キートス マネージャーの新開豊員(とよかず)です。

近い将来、内燃機関の自動車はなくなり、全ての車がEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)に置き換わっていくという話を耳にすることが増えてきました。しかし本当に、近い将来に全ての車がEVやFCVになるなんてことは、実現可能なのでしょうか?

車載用電池生産量からみるEV世界生産台数の上限

2019年1月30日の日本経済新聞に掲載されていた「世界の車載用電池の出荷ランキング」のデータを参考に、電池の生産量から、どの程度現実的なのかを想像してみました。

車載用電池出荷ランキング

「世界の車載用電池出荷ランキング」   日本経済新聞 2019年1月30日より

記事によると、車載用電池の生産容量ベスト10を日本、中国、韓国の3カ国が占めており、その合計はおおよそEV(電気自動車)、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグインハイブリッド車)に搭載されるバッテリー総量とみて問題ないものと思われます。このグラフを合計してみると57ギガワット程度となります。

今回のデータは1~10月分の10ヶ月分の出荷量でした。1ヶ月平均5.7GWhなので、残り2ヶ月分を11.4GWh程度として試算します。すると車載用電池の年間世界生産量は、57GWh(10ヶ月)+11.4GWh(2ヶ月分)を合計した68.4GWh程度ということになります。

もし世界中の電池を日産LEAFに搭載したら、何台作れるのか?

では、世界で最も売れている電気自動車である日産リーフに、世界中で生産できる全ての電池を搭載したと仮定して、何台のEVを生産することができるでしょうか? ちょっと計算してみましょう。

  • リーフに搭載されている電池容量は40kWh ※e+のモデルは62kWh (2019年1月末時点)
  • 世界のトップ10社で生産される電池容量は、合計 68.4GWh
  • 単位がわかりにくいので、ギガをキロに変換すると、68,400,000kWh
  • 1台あたりの電気容量、40kWhで割ると生産可能な台数を導き出せる
  • 68,400,000÷40=1,710,000

つまり、世界中の車載用電池を集めてLEAFだけを作った場合、およそ170万台を生産できることになります。車体があっても電池がなければそれ以上の台数を生産することができないので、電池の台数が生産台数の上限となります。世界中の車載用電池を全部集めたとしても、LEAFは170万台しか生産できないということです。

結論:内燃機関は当分なくならない

2017年の世界自動車市場が9,500万台規模に対して、現在生産できる電池が170万台分というのは2%にも満たない数字です。今後、電池の生産量が10倍に伸びたとしても、まだまだ20%。年間1,700万台程度しかEVを作れないのです。これらの状況から、内燃機関のない自動車に全て切り替わる時代はまだまだ先になりそうです。

CO2排出削減の観点からすると、今後の自動車の電動化の流れが変わることはないと思われます。でも、最近よく聞く「もうすぐ内燃機関がなくなる」という話を近いうちに実現するのはかなり難しそうです。とはいっても自動車に携わる生産の現場では、内燃機関が減る時代に備えて今から行動することは大切だと思います。