ドイツで考えた「日本の再生可能エネルギー」

こんにちは、オフィス・キートス マネージャー・省エネアドバイザーの新開豊員(とよかず)です。2018年10月にドイツを訪問した際、自然の力を使った再生可能エネルギーを見る機会が多く、日本の再生可能エネルギーについていろいろ考える良い機会となりました。

まず、ベルリン空港に到着する前、ソーラーパネルが並ぶ巨大な太陽光発電所がいくつも目に付きました。

 

 

 

 

 

また、ドイツ国内を電車で移動した際は、車窓から多くの風力発電の風車を見ることができました。

このような風景を見ながら、環境先進国のドイツと、日本のエネルギーの考え方の違いについて思い巡らしていました。

自然エネルギーは大規模停電の原因になりうる

EUは、2030年までに再生可能エネルギーの比率を32%にするという目標をたてています(2018年6月20日時点)。

しかし、太陽光や風力など自然に依存した発電方法は供給量が不安定になり、状況によって大規模停電が引き起こされてしまう可能性があるという一面もあります。その理由は、現時点ではコストや技術的な問題で大容量の電気を貯めておくことができないので、電力の需要と供給のバランスが崩れてしまうと周波数に乱れが発生し、その影響で発電機が故障する可能性が大きくなります。故障を防ぐために一定の条件を超えると自動的に発電機が停止するようになっているので、自然に依存した発電では大規模停電が発生する可能性があるわけです。

日本では2018年の10月20日、21日と2日連続で、九州電力が太陽光発電所の一部を停止しました。この原因は、暑い時期が過ぎて九州全体でエアコンの使用料が減少したことと、土日ということで昼間の企業活動による電力消費が大きく減ったことが主因です。太陽光による発電が供給を上回ったため、発電機の故障を防ぐために一部の太陽光発電を停止したということでした。

そこで、再生可能エネルギーの使用割合が日本より大きいドイツではどのように制御しているのか、気になってきました。今後の日本の再生可能エネルギー導入に対して意義のあることだと思い、ちょっと調べてみました。

ドイツでは、2014年の時点で再生可能エネルギーの割合が26%となっており、現在はもっと割合が増加していることと思います。一方日本では、経済産業省が2018年3月26日に公開した「エネルギー基本計画」で、2030年の目標値として再生エネルギーの比率を22~24%にするとしています。ドイツのほうがやはり先を行っています。

ヨーロッパと日本、再生可能エネルギー事情の違い

(この項は全ての情報を現地で確認できたわけではなく、聞き集めた情報から私見として記しています)

一番大きな違いとして、ドイツは隣国と陸続きであることが挙げられます。EUでは各国が電力を融通し合うことができる仕組みが出来上がっているので、ドイツ国内だけで消費しきれない電力は、EU内の他国に売却することができます。

一方日本では、西日本と東日本で周波数が異なる、本州から北海道に送電している送電線が直流であるなど、EUのように余剰電力を融通しあうことが技術的に難しくなっています。

次に、原子力発電所についての考え方が大きく異なる点もあります。一般的に、原子力発電は発電量の増減コントロールが難しく、一定出力で連続運転することが前提になっているため、需給調整が必要になったときに簡単に止められないという事情があります。

フランスなどでは再生可能エネルギー(主に太陽光発電と風力発電)の発電量が増えそうだと予想された場合、自然エネルギーを優先して原子力発電所の停止を行うこともあるようです。原子力発電所を度々停止させることは電力的にも無駄が多く、どのような判断基準が設けられているか興味深いところですが、「自然エネルギーを優先させる」という考え方が根付いているように思われます。

日本では、ベース電源として原子力発電を使用することになっており、2030年の目標値としてエネルギー比率で22~20%を原子力発電でまかなうとしています。発電量を調整しにくい原子力をベースとして使う前提で考えるため、発電量を自然に依存して供給が不安定な再生可能エネルギー利用の割合を増加させることが難しくなっているように感じます。だからといって、発電量を調整しやすい天然ガスなどの火力発電を増加させるとCO2排出量が増えるため、温暖化ガス排出抑制の観点からこちらも実現は難しい。思い切った妙案は出にくいように感じました。

日本で再生可能エネルギーの割合を増やすための課題は?

以下、個人的な意見とはなりますが、今後日本で再生可能エネルギーの割合を増やしていくために、克服する必要があると思われる課題をまとめてみたいと思います。

  1. 地域をまたいだ送電ネットワークの建設
  2. 家庭用やEVなど小規模蓄電池を結んだ広域電力の融通
  3. 個人宅での余剰太陽光発電を地域で融通(IoTの利用)
  4. スマートグリッドの積極的導入
  5. 廃車となったHV、PHVやEVに搭載さていた電池をつなぎ大規模蓄電池として使用するための制御技術の確立
  6. 電気として余剰電力をためておくのではなく、水素など輸送、貯蔵、使用のしやすい物質への変換(余剰電力→水素 電力不足→燃料電池発電→供給)

インフラ整備から始めなければならず、すぐの実現は難しそうです。

まとめ

ものづくりの現場ではIoTが注目されていますが、個人的には、生産管理よりも電力のほうがIoTと親和性が高いと感じています。今後、オフィスキートスとしては「ものづくりの現場」「エネルギー」「IoT」についてより多く、そして詳しく情報をキャッチし展開していけるよう努力していきたいと思います。