オフィス・キートス マネージャーの新開豊員(とよかず)です。今年4月にポートメッセナゴヤで開催された「名古屋ものづくりワールド2018」でボーイングジャパン㈱社長のブレットゲリー氏の特別講演を聴講してから、一度現地を見学してみたいと思っていました(講演聴講の記事はこちら)。その後、シアトルに行く機会があり、念願の工場見学が実現しました。写真はボーイング、エバレット工場に併設された航空博物館、Flight of Dreams のエントランスです。
シアトル市内から車で1時間ほどの場所にあるボーイングエバレット工場。なんとこの工場、「容積が世界最大の工場」としてギネスからも認定を受けているとのこと。この工場で働く人員数は約3万人。さすがアメリカと思わせる大規模な工場でした。工場見学中の撮影は禁止なので、残念ながら工場内の感動を画像でお伝えできませんが…… Flight of Dreams 2階デッキから、外観を撮影することができました。
エバレット工場は空港に隣接していて、完成した飛行機はそのまま滑走路から飛んで納品されるんだそうです。写真はカタール航空機の着陸直前の様子。奥に見える白い建物が工場群です。
写真をもう1点。組み立て工場のドアには飛行機の絵が描かれています。手前左の緑色の飛行機は、Boeing787の機体です…… というと、建物の大きさが伝わるでしょうか? 緑色の飛行機は、塗装前の下地の状態だそうです。
組立中の飛行機を間近で見学
さて、本命の工場見学ですが、Flight of Dreams からバスに乗って上記の工場群を回ります。工場入口でバスを降りて、地下道などを歩いて見学通路に向かう形でした。ガイドはもちろん英語。日本の講演で予備知識があってよかった。弊社代表の通訳なしでも理解できる部分があり助かりました。
この工場では最新型機787型機や777、767、747型機を製造しています。そして、最新型機777X、1号機の生産が始まっていました。最新機種の機体の一部が見られたことは大変貴重な体験でした。
航空機は製造・販売・フライトに至るまでに厳しい基準を満たす必要があり、型式証明を受けた機体のみ、米国内で製造販売することができることになっています。これが事実上の世界標準です。現在、三菱MRJ90がこの型式証明を取得するため日本とアメリカで飛行試験を行っています。ですのでこの○○○型以外の航空機を製造販売することはできないということです。MRJがなかなか販売に至らないのもそのためでしょうか。
ボーイング機を発注、支払のタイミングは?
ボーイングの飛行機は、当然ですが完全受注製造となっており、席数や装備などの仕様打合せ後、前金を支払って製造が始まります。工程では組立後に塗装に入るのですが、面白いのはこの塗装を始める前に、航空機代の残金を全額支払う契約になっているそうです。
逆にいえば塗装前なら、デポジットとして支払った金額までの支払いでキャンセルが可能です。これは、機体が完成してしまっても、塗装前なら別のエアライン会社に売ることができるから……という理由だそうです。おもしろい。つまり、キャンセル機なら割安に購入することができますが、こんなことはめったに発生しないそうです。でもどんなに安くなっても個人ではとても買えませんね。
さて、名古屋で聞いた講演では、エバレット工場では紙での指示書をVRに置き換え、配線など複雑な作業のミスを大幅に削減することができたとのことでしたが、今回の工場見学で見られた範囲でその光景を確認することができなかったのは残念でした。しかし、尾翼、胴体、先端、主翼が流れ作業のように作られていく様子を見学することができ、とても勉強になりました。
また、日本の一般的な工場での働き方と異なり、個人個人がゆったり仕事に取り組んでいるように見えたのは私だけでしょうか。だからアメリカは自由な発想の商品が生み出されるのではないだろうかと個人的に感じられる時間でした。
世界に4機しかない「ドリームリフター」にも遭遇
ところで、ボーイングの機体の尾翼などの大型部品の多くが、日本製なのだそうです。大型部品を世界中のサプライヤーから運ぶには、ちょっと変わった形の専用飛行機「ドリームリフター」が活躍しています。この機体は世界に4機しかないそうですが、今回はこのレアな機体に今回、2度も遭遇することができました。
1回目は、中部国際空港を発つ直前、滑走路に着陸した瞬間を目撃。中部にはボーイングのサプライヤーがとても多いとのことで、後から聞いて納得しました。
2度目は、エバレット空港に駐機中の様子を目撃しました。中部から来た部品を降ろしたところでしょうか?世界に4機のレアな機体に2度も出会えて、かなり幸運でした!
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