ものづくりライターの新開です。2023年12月7日は、工作機械メーカーマザックの美濃加茂工場 ワールドテクノロジーセンターで開催されたプライベートショー「DISCOVER2023」にお邪魔して、MAZAKの最新技術や最新モデルについて勉強してきました。

2023年のキーワードは「高生産性」+「環境負荷低減」

このイベントはヤマザキマザックが毎年開催していて、最新のイノベーションや技術ソリューションをユーザーや関係者に紹介するプライベートショーです。日本だけでなく世界中のマザックの拠点で開催されているそうです。私がお邪魔した会場は、岐阜県美濃加茂市にあるMazakのワールドテクノロジーセンターでした。

今年のキーワードは「高生産性」+「環境負荷低減」。人手不足と働き方改革がダブルで押し寄せる世情に合わせ、工程ごとにさまざまなタイプの自動化と、環境負荷を低減する取組みが提案されていました。

Mazak美濃加茂工場 ワールドテクノロジーセンターのエントランス

協働ロボットとAGVによる工程自動化の例

最初に取り上げたいのは、協働ロボットとAGVの連動による工程の自動化事例です。この展示では、NC旋盤へのワークの取付・取り外しを協働ロボット「EZ LOADER」が担い、加工後の製品をAGVが運んでいました。

EZ LOADERとNC旋盤、AGVの連動事例

この協働ロボット EZ LOADER シリーズのポイントは3つあります。

  • わずかパレット1枚分のスペースに設置可能で、移動もできるので複数の装置で使える
  • 「EZ LOADER APP」が、MAZATROLの加工プログラムと連動してワークの形状を自動的に把握する
  • ロボットの動作を簡単なアイコンの選択でプログラム作成可能。
    つまり、プログラム知識のない社内のスタッフがロボットを操れるようになる

中でもいちばん大きな進化は、③の「専門知識がなくても、社内でロボットのプログラムができる」ではないでしょうか。これまでロボット導入の最大ハードルになっていたのは、おそらくロボット本体よりも高額になりがちな「システムインテグレーターの技術料」です。社内にロボットのプログラムができる人材がいない場合、誰かがロボットメーカーの講習に参加して複雑なプログラムを覚えるか、都度インテグレーターを頼るしか手がなかったように思います。

ですが、MazakのEZ LOADERは、新型のMazatrolを搭載した設備であれば、加工プログラムとの連携で、ある程度のプログラムを自動生成する機能があります。プログラムができれば難しくない設定で加工を進めることができるようになるということで、これはMazakを選ぶ意味がある機能だ……と感心してしまいました。

オフィスと加工現場の自動化がつながった「MAZATROL DX」

2点目の注目ポイントは、バックオフィスも含めたDXの提案でした。これまで切削加工の工場では、加工現場と事務所で別々のソフトを使って別々に改善やDXに取り組んでいたことと思います。しかしMAZATROL DXの取組みは、これを一貫してデジタル化できるという素晴らしい提案だと思いました。

まず、事務所側では「クイック見積」「自動プログラム」「加工シミュレーション」「加工分析」の4工程で「デジタル段取り」を行います。

加工現場では、事務所の「デジタル段取り」の結果を受けて発行された「デジタル加工指示書」をもとに、「工具・治具・素材の取付指示」「工具・座標の自動計測」などの機上段取りが自動化されます。

つまり、3Dの図面を読み込めば見積からプログラム、シミュレーション、工具の選定、座標の自動計測までを一気通貫で実施してくれるということなので、スゴいことだと思います。実際、MAZATROL DX導入後には加工の段取時間が約38%減少したという事例も出ているそうです。

カーボンフットプリント50%削減の新技術も

3つめのポイントは、環境対応です。マザックは2030年までに2010年比でカーボンフットプリント50%削減を目標に掲げているそうです。目標達成を目指す取組みの一環として発売されたのが、HCNとVARIAXISシリーズの「NEO」モデルに搭載されている省エネの取組みとのことです。

カーボンフットプリント削減の解説図

マザックの加工機の消費電力量を分析したところ、マシニングセンタの消費電力量の多くの部分が実はクーラントで使われていたことが判明したそうです。というのも、従来は加工の種類や形状、材質にかかわらず、常にクーラントを100%の出力で吹き付けていたのですが、でもよくよく考えたら、クーラント出力が100%も必要ない材質や形状などがあった。そこでMAZATROL CNCとの連動で効率的に制御できる仕組みを導入したそうです。そのほかにもスラッジ処理の改善、クーラントの攪拌、消費・回生電力の見える化などを並行して行い、消費電力量を最大46%削減できるようになったとのこと。

製造業でも今後環境負荷の低減への取組みが当たり前になってくると思いますが、その対策を設備側で実施できるのは大変ありがたい、と思いました。

人は「人にしかできない仕事」をする時代へ

最近もいろいろな展示会やイベントを回っていますが、全体的なトレンドとして「人じゃなくてもできる単純作業は機械やシステムにおまかせして、人は人しかできない高度な仕事に集中する」という方向性になってきていると感じています。小さな企業もこの流れから逃れられそうにありません。

そして機械やソフトにおまかせできる仕事の範囲がどんどん広がっていて、導入のハードルもかなり下がってきたように感じます。自分たちで自動化に取り組める環境・ツールも整ってきて、自動化はずいぶん身近になってきました。このあたりも含めて今回は大変勉強になりました。MAZAKさんには工場見学、最新の環境性能のご紹介などでいろいろとお世話になりました。ありがとうございました。

以上、ものづくりライター新開でした。

Mazak DISCOVER 2023
https://marketing.mazak.com/discover2023/

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