ものづくりライターの新開です。2023年12月7日、MAZAKのDiscover2023にお邪魔した際、スウェーデンの工具メーカー「セコ・ツールズ」の小林さんに久しぶりにお会いすることができました。小林さんからは、セコ・ツールズが取り組んでいる切削工具の環境対応の取組みについて教えていただきました。

セコ・ツールズは、スウェーデンの切削工具メーカー 

セコ・ツールズは、スウェーデンを拠点に置く世界的な工具メーカーで、フライスや旋盤、穴開け用の工具などを製造販売しています。切削効率と環境性能の高さで差別化しており、世界ではリーディングカンパニーの立場だと思いますが、日本でのシェアはまだ1%程度なのだそうです。

さて、セコ・ツールズは方針のひとつに「持続可能なビジネス」を掲げていて、環境への影響を最小限に抑えながら、従来と変わらぬ高品質な製品を提供する活動をされています。例えばその活動事例のひとつに「廃棄する工具の回収(買い取り)」があります。既に同社製チップの廃棄時には顧客からキロいくらで買い取りをして、新しい工具の原材料として再生して活用しているということでした。そんなセコ・ツールズさんに、今回は環境負荷の低い新しい工具の環境性能をご紹介いただきました。

Discover2023でのセコ・ツールズの展示

工具の処分に費用がかかる時代がくる?

従来の切削工具は、黒染めやニッケルメッキなどの表面処理がされているのが一般的です。この表面処理、工具として使っている間は性能を発揮するのですが、実は廃棄時にリサイクルが難しいという難点があります。廃棄されたリサイクル工場で溶解処理をする際に、工具の表面を覆っている表面処理の成分から環境に良くない成分が発生することがわかっているそうです。

そんな背景から、現在は工具を無料で引き取ってもらうのが一般的なのですが、将来的には、工具の処分費用が発生するようになる可能性が高いとのこと。つまり、1万円で買った工具を処分するのに○万円かかってしまうような、そんな流れも出てきているのだそうです。

そこで、セコ・ツールズの新製品がこちら。自社開発の特殊なステンレスの新素材を採用しており、黒染めなどの表面処理なしで高い切削性能を実現しました。

自社開発の新素材、特殊なステンレスを使った切削工具

表面処理をしなくても性能が出せる新素材を開発したことにより、製造時に表面処理のコストが不要になるので、材料費が上がっても販売価格は既存製品と同等に抑えられているそうです。そして表面処理がされていないので、使用後に廃棄コストをかけず、素材として再生できる。そして、セコ・ツールズが既に提供している「リサイクルできる体制」と合わせ、今後「環境性能の高い工具」として存在感を増していきそうです。

小林さんは「性能が良いのは当たり前。今後ものを捨てにくい時代になってくる中、基本性能に加えて「環境性能」の高い切削工具を選択肢に加えていただければ」とお話しくださいました。

切削工具の環境性能 3つのポイント

ということで、今回伺った切削工具の環境性能を3つのポイントにまとめてみました。

【切削工具の環境性能 3つのポイント】

  • 製造段階から、環境負荷の高い「表面処理」をなくす
  • 使用後にリサイクルできる材料でつくる
  • 使用後に素材をリサイクルする体制を提供する

セコ・ツールズは日本でのシェアはまだ1%程度と小さいからこそ、世界の環境対応のトレンドを先駆けて日本に持ち込めるのだと思いました。久しぶりのお会いできた小林さんとツーショットを撮り忘れたことが悔やまれます。小林さん、ありがとうございました!

以上、ものづくりライター新開でした。

セコ・ツールズ
https://www.secotools.com/

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