ものづくりライターの新開です。2023年10月中旬、広島での活動の発表の後に、しまなみ海道を通って愛媛県に向かっていました。途中、今治市の対岸にある「大島」という島でちょっと寄り道。「道の駅よしうみ生き生き館」から出港する「来島海峡急流観潮船」に乗船したら、想像以上に充実した時間を過ごせました。

来島海峡の急流とうず潮、造船所を観るボートツアー 

「来島海峡急流観潮船」は、大島にある道の駅「よしうみいきいき館」から出航している観光用ボートです。「急流観潮船」というネーミングの通り、もともとは海流が速く複雑な難所である来島海峡の潮流や渦潮を観るアトラクションだと思うのですが、私の興味は別のところにありました。コースの中で、日本いや世界有数の造船所が集積する今治市の造船所群を、海側から工場見学できるのです。

道の駅近くの船着き場から乗船し、ライフジャケットを着用して定時出航すると、すぐに来島海峡大橋を下から見上げるダイナミックな眺めが登場。クルーズ中はガイドさんが海況の様子や来島海峡の船の通行ルールなどについて、いろいろと教えてくれました。この来島海峡では海流の向きによって船が通れるルートが変わるのだそうです。

来島海峡大橋を下から眺めるダイナミックな景観

大型船舶の建造・修理が進むドックへ

出港地の大島から来島海峡を挟んだ対岸、今治市の海岸沿いには大型船舶の建造ができる大手造船会社が並んでいます。ボートは20分ほどで今治の造船所エリアに到着しました。

今治市の沿岸部分は大型造船所が集まる日本有数のエリアで、世界中から大型船舶の注文がここ集まるそうです。現場では大きなスクリューや船体の組み立てなど、船の建造工程を間近で見ることができます。

大きなクレーンが並ぶ造船所エリアに近付いてきました

ドックには、組立工程、溶接工程、塗装工程など、さまざまな進捗段階の大型船がズラリ。近寄ってくると大きさが際立ちます。

左の黒×赤の船体では、進水式後には水中に入ってしまう部分(赤色部分)も見られました

船が完成したら水中に入ってしまうところが「今だけ」見られるのも造船所ならではの光景でした。写真の左側の船体では赤く塗装されたエリアが水中に入る部分で、船首の下の小さく見える横穴には揺れを制御するための横向きのスクリューが入っているのだそうです。お仕事柄、ほぼ毎日来ているガイドさんは、「あ、今日は○○部が完成したな」「今日はブリッジにガラスが入ったな」「塗装が進んだな」「間もなく進水式ですね」という感じで船の1日ごとの進捗が見られるのが面白い、とおっしゃっていました。その仕事、ちょっとうらやましいです。

船尾側に回った様子

さて、ボートはマジュロ船籍「HG ANTWERP」号の船尾側に移動しました。ここでの見所はこれ、船のスクリューです。

巨大な船のスクリュー

スクリューも、進水式後には絶対に見られないポイントです。よく見ると切削跡がきれいに残っていて「どんな大きさのどんな機械で切削したのか……」「ペラの根元は溶接なのか、それとも……?」と気になることがいっぱいです。現場では答えまでたどり着けなかったので、いつか調べてみたいと思います。 

さて、興味津々の造船所の工場見学のあとは、一般の乗船客向けのメインアトラクションの「急流」へ。この日は中潮で渦潮は見られませんでしたが、かなりの急流を体感することができました。

急流をパワフルに乗り越えていきます

こんな感じで約1時間の船旅は、船の建造工程や海の急流を体験できた一石二鳥のクルーズでした。ものづくりライターとしてはダイナミックな造船の過程を間近で見られて大満足。ありがとうございました。

そして下船後には、ガイドさんが教えてくれた近くの展望台「亀老山展望公園」のパノラマ展望台にも行ってみました。こちらは隈研吾氏の設計でリニューアルされて、Trip Advisorの「旅好きが選ぶ!日本の展望スポット ランキング 2017」で第2位、「亀老山山頂から望む来島海峡」が四国八十八景に選定されたという有名スポットです。

Trip Advisor で有名ということで、海外からわざわざやってきた旅行者にもたくさん会いました。隈研吾氏による地形を活かした展望台の構造も見どころではありましたが、何より来島海峡の展望が素晴らしい場所でした。

以上、ものづくりライター新開でした。

来島海峡急流観潮船
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